子どもの「嫌」には理由がある~子どものドラマを聞こう

親の誘いには裏がある・・を教えてくれた犬のお話

今は昔のお話し。

かれこれ40年ほど前の日本。
当時は飼い犬の放し飼いは普通にあって、野良犬なのか飼い犬なのかは首輪をしてるかどうかで見分けてた。
でも中には飼い犬でも首輪をしていない犬もいて、そうなると、知ってる犬かどうかで見分ける・・みたいな非常にワイルドな社会だった。

当時、私は徒歩15分ほどのそろばん塾に通ってた。
火曜と木曜。
あんまり好きでは無かったけれど、友達も行ってるし親も勧めるので嫌々通ってた。
やめたいなぁ〜。
スピードを競う感じや、いつも先生が鬼気迫る感じが私には合わなかった。
何とかやめる口実を見つけたい。
でも親に上手く説明できるとは思えない。

そんな思いを抱きつつそろばんには通い続けた。
ある日、嫌々そろばん塾に向かう夕暮れ時。
一匹の犬が向こうから近づいてきた。
当時の私は犬が怖く、特に、ラーメン屋の柴犬と友達の飼い犬『市(イチ)』はいつも放し飼いで、出会うと心の底から怖かった。
しかも人を噛んだ事があるともっぱら噂だったので、その付近を通る時は細心の注意を払っていた。
子どもの嫌

幸か不幸か、そろばん塾への道のりはその2匹のテリトリーを通過する。
何回か遭遇しては、目を合わさずかわしたり、遠回りをして乗り切っていた。

そして、その日は運悪く市に出会った。
市の飼い主は私の同級生のお父さん。
どうやら怖い仕事をしていて、市は闘犬をしていたと友達に聞いた事があった。
思い返すといくら昔でも、闘犬が放し飼いされていたとは考えにくい。
友達の吹聴にまんまと乗せられていたのかもしれない。

乗せられていようがいまいが、その時の私は恐怖におののいた。
『市がこっちに来る!』
たかだか10歳の私には、土佐犬ほどもある大きな犬は幽霊に匹敵する恐怖でしかなかった。

周りを見渡しても大人の姿は無く、逃げ込める脇道も無い。
一生懸命頭を働かせ
『急に走っちゃダメ。』『目を合わせちゃダメ。』
そう言い聞かせてそろばんを抱えて真っ直ぐ歩いた。
市はクンクンとその辺を物色しながらこっちへやって来る。
距離がどんどん狭まる。
横を通過した時、悪いことに目を見てしまった。
目が・・合った。
と、同時に市がこちらにゆっくりと近づいてきた。
『走っちゃダメ!走っちゃダメ!』
心で何回も繰り返して、泣きながら歩いた。
数メートル進んで振り返ると、市は等間隔で付いてくる。
そろばん塾まではあと50mほど。
『お願いします!お願いします!付いてこないで!』
嗚咽を噛み殺しながらようやっとそろばん塾の入口までたどり着いた。
私は振り返らず、震える手で扉を開け中に入り、少しだけ扉を開けて様子を伺った。
その隙間から市が通り過ぎるのが一瞬見えた。
体の力が全て抜け、私はその場で大泣きした。

絶対やめる!
その夜私はとうとうとその恐怖を母親に語った。
そろばんが嫌なんじゃない、市が怖いんだ!
このままだと私は噛み殺される!
心の底からお願いした。
真剣だった。

すると母親の返事は
『そうかぁ。あそこの先生はたまにうちの店のうどん食べに来てくれるからお返しのつもりやっただけやし、別にやめてもいいよ。月謝もバカにならんしな。』
アッケラカランと言い放った。

商売に利用されたのか・・。
何となく、自分の真面目さがバカバカしくなった。
もう、習い事はしない。
家でマンガ読んでる方が安心だ。
大人の誘いはもう乗らない。

子ども心に何かを学んだ出来事でした。

あれから40年。
算数は図形しかいい点は取れなかったけれど、犬は大好きになってます。
あの怖い体験のお陰で、嫌いなそろばんもやめる事ができました。
そう思うと市のお陰なのかもしれません。

しかし、市はどうして私の後を付いてきたのか。今の私ならどうしてるかな。
今更ながら市に会ってみたいと思いました。
もう、天国だよね・・。
本当は遊んで欲しかったのかもしれないな。
町の人達に怖がられてたもんね。
怖がってごめんね、市。
でも、本当に怖かったんだよ笑。

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今日はかなり懐かしいお話をしました。
蜘蛛の巣が張ってるような記憶を掘り起こして書いてみました。

子どもの嫌にはそれなりの理由がある。
改めて実感しましたよ。
子どもの話はしっかり話を聞いてあげて下さいね。

では、今日はこの辺で。

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